クリスマスの扁桃摘出の手術はなんだかんだで無事終わり、退院した後、主治医の若先生にドライブランチに誘っていただきました。

昔から、転んでもタダでは起きないことがモットーですが、ピンチ(手術)をチャンス(デート?)に変えるとは我ながらアッパレです。

お昼前にアパートの駐車場にお迎えに来ていただき、行きついたのはの山奥の古民家を改装した蕎麦屋でした。色々な器が壁に作りつけられた棚に所せましと飾られ、なんだか雰囲気の良い高級そうな店。

当時、近所のうどん屋で時給600円のバイトしていた私にとって、そば1杯が2000円越えとは破格の贅沢でした。

店の中をきょろきょろ見回して、高級そばを待っていると、若先生が鞄から一眼レフを取り出したので、「え、写真?私を?一緒に??」とちょっと緊張していると、若先生 カメラを渡しながら 仰いました。

「撮って」

耳を疑いました。

・・・・・今、なんと?

え?

目も疑いました。

片肘を机について、顎をささえて、「うーん、マンダム」のポーズをとるではありませんか。

「もうちょっと後ろから。この壁一面の器が写るようにしてね。もう少し下がって。もっと右」

あまりのことに顎が外れる間もなく、レンズのフタを外して撮影開始です。

ここで良いですか?パシャパシャカメラ

「よし、次はアップ。もっと前、少し下から」

カメラパシャパシャ

「よし、じゃあ、食べようか」

一気に恋は覚めました。


写真)イメージです
そば処「観」/奈良に住んでみましたさんのHPよりコチラ

その出来事のパンチ力が強すぎて意識を失ったのか、その後のことは一切思い出せません。

私は、まだ医者になる前でしたが、非常に有益なことを学びました。

写真は色々な角度で撮り、記録をちゃんと残した方がいいことを。
(おかげさまで、症例写真の記録に今でも役立っています)

想定斜め下からの不意打ちの乱れ打ち。
私の身の回りの医者だけが、ちょっとおかしいんでしょうか。
もしや、類には類。友を呼ぶ。破れ鍋に綴じ蓋。

その2年後、「呪われた手術」を見舞いに持参した夫は、ブラックユーモア大先生の弟子となったのでした。

引き寄せの法則でしょうか・・・

見寺絢子クリニック
西田美穂

※医者になった後で、大先生の弟子(夫)に聞いて分かったこと>

扁桃摘出は通常、大先生が自ら執刀されるような手術ではなく、私が医学生ということで特別に執刀してくださっていたこと。

私の手術後の経過は、他の患者さんの経過に比べて圧倒的に良かったのは、執刀医の腕によるところも大きいということ。

全身麻酔という選択もあったが、大先生の高度なテクニックならば局所麻酔でさくっと終わらせた方が、術後の体への負担が軽いだろうとの判断で局所麻酔が選択されたであろうこと。

大先生、本当にありがとうございました。